マーケティング行動心理学
おとり効果とは?ユーザーがつい買ってしまう消費者心理を事例・具体例から解説
おとり効果とは、複数の選択肢の中に、他のひとつの選択肢よりも明らかに劣る選択肢(おとり)を混ぜると、意思決定に影響が出るという心理効果です。
この記事では、マーケティングに生かすヒントも交えながら、おとり効果について解説します。
意思決定の場面で、消費者は一体どんなことを考えているのでしょうか。
目次
1. おとり効果とは?
人は、性能や価格の違う2つの商品A、Bで迷っているときに、例えばAよりも劣ることが明確な第3の商品Cを提示されただけで、BよりもAを選ぶようになる傾向があります。
こういった現象を、おとり効果と呼んでいます。
吸引効果、非対称優性効果、対照的支配とも呼ばれます。マーケティング用語としても使われている言葉です。
おとり効果を証明したのは、行動経済学や意思決定論を研究しているダン・アリエリー博士です。
ダン・アリエリー博士は、TED登壇の中で以下のように解説しています。(注1)
「ある選択をする際、私たちは自分で制御してしている感覚があります。
自分でコントロールして決定していると思い込んでいるのです。
しかし、実は決定している幻影を見ているに過ぎません。
ただ、そんな考えを受け入れるのは大変難しいでしょう。
(自分自身の意思決定の仕組みが)複雑すぎてどうしていいかわからないから、
何であれ選ばれているものをそのまま受け入れるのです。」
実際に、ダン・アリエリー博士が行った実験からおとり効果について解説します。
注1)Dan Ariely「Are we in control of our own decisions?」https://www.ted.com/talks/dan_ariely_are_we_in_control_of_our_own_decisions?utm_campaign=tedspread&utm_medium=referral&utm_source=tedcomshare#t-500985(2021年12月22日)
2. おとり効果の事例を解説
では、おとり効果の事例を解説します。
まずはじめに、ダン・アリエリー博士が行ったおとり効果の実験を紹介し、そのあとに日常生活でも見られるおとり効果について紹介します。
おとり効果の事例①
ダン・アリエリー博士は、2009年マサチューセッツ工科大学の学生100名に対し、ある実験を行いました。
エコノミスト誌の広告で3つの選択肢が用意されていました。
A. オンライン購読 59ドル
B. 雑誌の定期購読 125ドル
C. オンライン購読・雑誌の定期購読 125ドル
ダン・アリエリー博士はこの広告の選択肢を学生100名に「どれを選ぶ?」と質問をしました。
すると、大部分の人がCを選択しました。
結果は以下の通りです。
当然ながら、明らかにCよりも劣るBの「雑誌の定期購読 125ドル」を選んだ学生はいませんでした。
次に、Bの選択肢をなくし、別の学生100名に「どれを選ぶ?」と聞いたところ、意外な結果になりました。
はじめの実験で16%にしか選ばれなかったAの「オンライン購読」が16%から68%に上昇し、一番人気だった「オンライン購読・雑誌の定期購読」は84%から32%にまで低下したのです。
Bの選択肢は、Cをより魅力的に感じさせる役割があったことがわかります。
事実、雑誌のみで125ドルというのは、オンラインと雑誌で125ドルというCの選択肢のメリットを引き立てています。
明らかに劣る選択肢が、別の一つの選択肢を引き立てることによって、人はその他の選択肢よりも引き立てられた選択肢を選んでしまう、と言えます。
ここで重要なのは、私たちは自分の好みをよくわかっていないということです。そして、自分の好みを知らないがゆえに外部の情報(選択肢)に影響を受けやすいのです。
おとり効果の事例②
おとり効果が働いている場面は、普段の日常生活でも見られます。
例えば、レストランのメニューを見てオーダーするときです。
おしゃれなレストランで贅沢なコースのランチを食べに行くとします。
メニューをみたときに、2,000円、3,000円、5,000円のコースがありました。
あなたは、どのコースを選びますか?
せっかく贅沢をしに来たのに一番下のコースでは物足りないかもしれないし、かと言って5,000円は高すぎるし……という気持ちから、3,000円を選びたくなるのではないでしょうか。
2,000円と3,000円のコースのみだった場合に比べて、2,000円よりも3,000円を選びやすくなることが予想されます。
5,000円のコースがおとりになって、3,000円に誘導されるのです。
選択肢を工夫することで、レストラン側は一番売りたいメニューを売ることができます。
価格に対しての感覚は、ユーザーによって異なります。
届けたいユーザーの感覚を理解しておとり効果を活用すると、よりよいUX体験につなげられるでしょう。
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3. おとり効果を活用するポイントは3つ
おとり効果は、相対性に基づき意思決定をする人の性質から生じる現象です。
この性質をよく理解して、ユーザーが選びやすくなる「おとり」を提示することが大切です。
実際におとり効果を活用する場合に、気を付けたい3つのポイントを解説します。
ポイント①:選択肢は3つ
おとり効果の選択肢は3つに設定するのがよいと言われています。
選択肢がいくつでもおとり効果自体は働きますが、人は選択肢が増えると意思決定に疲れてしまいます。
また、選択肢を増やしすぎると作る方も難しくなるので、少なめにするのがいいでしょう。
ポイント②:価格は松竹梅
おとり効果は価格が重要です。なぜなら、数字で明確な差を打ち出せるからです。
価格は高すぎず、安すぎず、5:3:2くらいのバランスで松竹梅に設定しましょう。
ポイント③:商品・サービス内容も松竹梅
消費者は賢く「失敗したくない」という気持ちで購買行動をすると言われています。
商品やサービスを検討する際には、価格に見合った内容でないと購入という意思決定はされません。
おとり効果を実践する場合、商品やサービスの内容も「松竹梅」に設定するとわかりやすいと言われています。
例えば、うなぎ店でよく見られるのは「松=特上」「竹=上」「梅=並」という設定です。うなぎの量や産地の違いなどでランク分けされています。
松竹梅の法則は、極端の回避性、中心化傾向などと呼ばれることもあります。
飲食店では、この法則を活用した戦略がよく見られます。
4. おとり効果とは?ユーザーがつい買ってしまう消費者心理の事例・具体例まとめ
この記事では、おとり効果の提唱者、ダン・アリエリー博士の実験から、日常生活で見られる具体的な例について解説しました。
複数の選択肢から一つを選ぶとき、私たちは自分の意思で決めていると思い込んでいますが、おとり効果が働いて、無意識的に不合理な選択をしているのかもしれません。
おとり効果をうまく活用して、選んでほしい選択肢に相手をうまく誘導してみてはいかがでしょうか。
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