UI/UXリサーチ / 戦略設計
LINE配信に最適なタイミングはある?時間差A/Bテストで得た最適配信時間の使い分け

LINE公式アカウントからの情報配信は、顧客との重要なコミュニケーション手段として多くの企業、サービスで活用されています。
しかし、せっかくLINEで情報を配信しても、ユーザーに読まれ、行動につながらなければ十分な効果が見込めません。効果を上げるためのポイントの一つが「いつ送るか」という配信のタイミングです。
配信時間は、ユーザーがスマートフォンをチェックするタイミングや、情報を落ち着いて見られる時間帯など「LINEが読まれやすい状況」を把握する、非常に重要な要素となります。
本記事では、実際に飲食系サービスでのLINE配信において実施した配信時間をずらして行ったA/Bテストから、開封率やクリック率を最大化するための最適な配信時間の使い分けを分析した結果について解説します。
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1. A/Bテストとは
A/Bテストとは、複数のパターンを比較し、どちらがより高い成果を出すか見極めるためのテスト手法です。
Webサイトやアプリの場合は、デザインやコンテンツが異なる2つのバージョン(AとB)を用意し、ランダムにユーザーへ表示させることで、クリック率や購入率などの行動データを比較・分析します。
A/Bテストは以下のようなさまざまな要素の比較に活用できます。
- ボタン:色、文言(例:「資料請求」vs「無料で試す」)、形、大きさ
- 見出し・キャッチコピー:文言、フォントサイズ
- 画像:写真の種類、イラスト、人物の有無
- レイアウト:情報の配置、要素の順番
- フォーム:入力項目の数、デザイン
例えば、あるECサイトで、商品の購入ボタンの色を「青色(A)」と「オレンジ色(B)」でテストした結果、オレンジ色のボタンの方がクリック率が15%高かったという具体的な数値で成果を判断します。
1度に2つのバージョンでテストするだけでなく、場合によっては複数(3つ以上)のパターンのテストから最も効果的なものを選ぶこともできます。
A/Bテスト実施のポイントは、一度に多くの要素を変更しないことです。ボタンのみの比較や画像の違いなど、テストする要素を絞らないと、どの変更が成果に影響したのかが正確に把握できなくなります。
改善の効果を正しく測定するためにも、テストする要素は一度に一つに絞るのがA/Bテストの基本原則です。
2. 飲食店向けサービスを時間差で A/Bテストを行った背景
時間をずらした配信でA/Bテスト(以降時間差A/Bテスト)を実施した理由は、弊社が請け負っていた飲食系サービスのLINE配信の効率を上げるためです。配信対象の選定から配信内容の作成まで一貫して担当していたため、1回あたりの配信数が約1万件とA/Bテストを実施するのに十分な規模であることは把握できていました。このため、毎週金曜日のLINE配信をより効果的に情報を届ける根拠を探るべく、比較要素として配信時間でのA/Bテストを実施することにしました。
具体的には、キャンペーン告知を配信する時間帯によって、ユーザーの反応に違いがあるかどうかを知り、最適な配信時間を把握することが目的です。
時間帯でのテストであれば配信時間を変えるだけなので、デザインやコンテンツで異なるパターンを用意するより手間がかかりません。さらに時間帯別で反応の違いがあると分かれば、以降の配信をより効果的に実施することができます。
そこで、時間帯のみ違う2つのグループ(グループAとグループB)を設定し、どちらの時間帯に配信した方が開封率やクリック率が高くなるかを検証しました。
時間差A/Bテストの設定方法
配信時間による効果の違いを正確に把握するため、配信時間以外の条件はできるだけ同一にする必要があります。
具体的には、A/Bテストの基本原則に従ってLINEの配信形式はAとBどちらもテキスト+バナー、配信内容も同様とし、配信対象であるユーザーの利用状況や契約プラン、居住地などの属性に偏りが出ないように2つのグループに分けました。
約1万件の配信対象リストをランダム関数を用いて、利用状況や契約プラン、居住地などの条件の偏りなく半分に分け、それぞれをグループAとグループBとして設定しました。
配信回数は計3回、すべて金曜日の配信でテストしています。
メッセージ内容は3回の配信でそれぞれ異なる内容を使用しましたが、各回グループAとグループBは同じ内容です。
LINE公式アカウントには配信内容を比較するA/Bテスト機能がありましたが(2024年10月2日でサービスの提供を終了)、配信時間帯を比較するA/Bテストの機能は元々提供されていませんでした。
そのため時間差A/Bテストは手動で設定しています。手動配信とは、二通りの異なる時間で配信予約しただけで、特別な設定はしていません。
使用ツール
配信時間帯による効果の違いを検証することだけが目的だったので、LINE配信に特化したマーケティングツールや、専用サービスを導入しなくても十分実施できました。
配信ツールはLINE公式アカウントの標準機能のみを活用し、ユーザーリストの無作為な振り分けはGoogleスプレッドシートを使用しています。
配信後の成果測定についても、LINE公式アカウントの提供するデータ(開封数、クリック数など)を基に、Excelで集計・分析しました。
3. 時間差A/Bテストの結果と分析
テストの結果
今回は、以下の3回にわたるテストを実施しました。
配信したメッセージは、「店舗限定のキャンペーン」や「会員特典のあるイベント案内告知」など、顧客にとってメリットのある内容でした。



テスト結果の分析
今回実施した3回の飲食系サービスにおけるLINE配信のA/Bテスト結果を総合的に見ると、配信時間帯によってユーザーの反応に明確な傾向が見られました。
開封率について
テストでは、12時半の配信(A)の開封率がそれぞれ47.8%、 49.4%、43.3%、17時半の配信(B)の開封率が46.7%、 47.9%、40.6%と、3回通して12時半配信(A)の方が、17時半配信(B)よりも高い開封率を示しました。
この結果から、総じて昼間の時間帯の配信が高い開封率を得やすい傾向があることが分かります。
クリック率について
3回のテストにおいて、昼間の時間帯の配信(A)クリック率は10.4%、12.8%、3.5%、夕方の配信(B)9.6%、10.9%、4.7%と、昼間の配信の方がクリック率が高い傾向にありました。
利用率について
一方で、利用率に注目すると、1回目(と2回目のテストでは、夕方(17時半)の配信(B)の利用率が8.4%、2.8%、昼間の配信(A)では4.35%、2.3%と、夕方配信の方が昼配信よりも高い利用率を示しました。
これは、ユーザーが実際にサービスを利用する行動に移るきっかけとしては、夕方以降の配信が効果的であることを示唆しています。
3回目のテストでは両グループとも利用率が低かったものの、昼間の配信(A)0.12%、夕方配信(B)で0.26%と、相対的に夕方配信の方が高い傾向は変わらず見られました。
分析結果からわかった傾向と注意点
A/Bテストを実施した結果をまとめると、対象の飲食系サービスにおいて2つの傾向が確認できました。1つ目は、ユーザーがLINEメッセージを開封・クリックする確率は昼間に高い傾向があること、2つ目は、実際にサービスを利用する行動につながるのは夕方以降の配信が効果的である可能性が示唆されました。
ただし、今回のテストは秋のある1ヶ月の金曜日に行った3回の配信という限られたサンプル数であり、さらに各回でメッセージ内容も異なっています。そのため、この傾向が純粋に配信時間によるものなのか、あるいはメッセージ内容や曜日、季節による影響なのかを判断するには、さらなる検証が必要です。
A/Bテストでより信頼性の高い傾向を把握するためには、同一条件下で試行回数を増やし、分析することが必要となります。
4. 結果から採用したLINE配信時間の使い分け
実施したA/Bテストの結果を踏まえ、LINE配信の目的別に最適な配信時間を使い分けることにしました。
開封率が高いお昼にはお知らせ系の内容、利用率の高い夕方には利用促進を図る内容、という使い分けです。
昼12時ごろ配信:まずは「見てもらう」情報収集の時間帯を狙う
利用シーン
この時間帯は、情報収集や軽いエンゲージメントを促す配信が有効だと考えられます。ユーザーの昼休みなど、スマートフォンをチェックしている可能性が高いという仮説に基づき、まずはメッセージを見てもらい関心を引くことを狙います。
適した内容
- 新サービス・新メニューの告知
- イベント開催のお知らせ
- クーポン配布開始の事前告知
など、まずは広く情報を届けたい内容
夕方17時ごろ配信:具体的な「行動」へつなげる
利用シーン
この時間帯は、ユーザーが職場や学校から帰宅、あるいは帰路で落ち着いてスマートフォンを操作し、具体的な行動を検討しやすい状況と推測されます。そのため、実際の来店や予約といった行動を直接促すことを狙います。
適した内容
- 当日から使えるクーポンの利用を促すメッセージ
- 「今すぐ予約」や来店を促すキャンペーン情報
- 当日や翌日開催のイベント
など、行動喚起に直結する内容
5. まとめ
今回の飲食系サービスにおける時間差でのA/Bテストの結果から、LINE配信は単に情報を届けるだけでなく、「配信の目的」に応じて最適な時間帯を選ぶことの重要性が示唆されました。
- お知らせ系の配信(開封率・クリック率重視):お昼の時間帯が効果的
- 利用促進系の配信(サービス利用への誘導):夕方の時間帯が効果的
今回の飲食系サービスにおいては、このように配信時間を使い分けることで、同じメッセージ内容でもLINE運用効果を向上させられる可能性が見えてきました。
最適な時間帯はサービスやターゲットによって異なりますが、効果的な配信時間がわかれば顧客エンゲージメントとビジネス成果の最大化に貢献するはずです。
配信時間以外にも、メッセージの文面や画像の種類などでもA/Bテストは実施できます。効率的なLINE配信を実現するためにも、一度A/Bテストを実施してみてはいかがでしょうか。
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