UI/UXリサーチ / 戦略設計
【初心者向け】UXの意味とは?UX戦略の正しい始め方を簡単解説
「UX」という言葉を日常でどれくらいの頻度で耳にしているでしょうか?
近年、消費行動の変化にともないUX(ユーザー体験)が重要視されています。
商品・サービスの売り上げが伸びないなど課題を抱えている方は、UXを見直すと改善に向けて前進できるかもしれません。
この記事では、UXの意味や重要視される理由をお話します。
マーケティングやブランディングに携わる方のご参考になれば幸いです。
目次
1. UX(ユーザーエクスペリエンス)の意味と重要視される理由
UXはユーザーエクスペリエンス(User Experience)の略語で、日本語で言うと「ユーザー体験」という意味です。
「ユーザーは商品・サービスを通じてどんな体験をするのか?」
を考えることがUXについて考えることであるといえます。
UXを考えることは、新商品・新サービスの立ち上げはもちろんのこと、既存の商品・サービスや広告・Webサイトの改善の際にも大切です。
UXに目を向けると、ユーザー自身も気づいていないニーズを掘り起こすきっかけになります。自社の事業やサービスに独自性が生まれ、うまく差別化につなげることができるかもしれません。
今回は、UXの意味と重要視される理由について具体例を交えご紹介していきます。
2. UX(ユーザーエクスペリエンス)の意味
UX(ユーザーエクスペリエンス)は「ユーザー体験」という意味です。
UXには「商品・サービスを通して、お客様・ユーザーにとって価値ある体験を提供する」という理念があります。
難しい言葉のイメージがあるかもしれませんが、UXという言葉自体はシンプルに「ユーザーの体験」を指し示しています。
本サイトでは、マーケティング用語をわかりやすく解説しています。
3. これまでの商品・サービスとUXに基づくサービスの考え
近年、なぜUXが注目を集め、重要視されるようになったのでしょうか?
その背景には、ユーザーの「消費」に対する考えについての大きな変化があります。
ユーザーの消費行動の2つの変化
・これまでのサービスの考え方
・UXに基づくサービスの考え方
これまでの商品・サービスと、UXに基づくサービスの考えの変化をみていきましょう。
これまでのサービスの考え方
UXの視点がない場合、ユーザーが何かを消費するとき、企業が提供するのはあくまでもユーザーが購入する商品・サービスそのものです。
例えば、カバンを購入するなら「カバン」商品本体ということになります。
UXに基づくサービスの考え方
続いて、UXの視点でこの消費について考えてみましょう。
UXは「ユーザーが体験したこと、感じたことのすべて」です。
先程の続きで、カバンを買う場合のUXについて見てみましょう。
・カバンを選ぶ商品決定の方法
(SNSやWebサイトをみる、店舗で見てみるなど)
・カバンを買うとき店舗の雰囲気を楽しむ
・カバンを買うときのスタッフさんとのコミュニケーションをとる
UXの視点では、商品・サービス購入前後のすべてのプロセスを、企業が提供していることになります。
最終的に提供するのが「カバン」であったとしても、購入まで、あるいは購入後に感じた付加価値があれば、それもUX=ユーザー体験ということになります。
現代のユーザーは商品を購入するだけでなく、購入前から購入後まで一連の体験プロセスも重要視しているのです。
4. UXが重要視される理由とユーザーの3つの価値観
モノと情報にあふれ、商品・サービスの質が消費者の求める一定の水準を超える時代。
商品・サービスを選んでもらうために、よいUXを設計していくことが求められるようになりました。
いつでも手軽に、一定のクオリティのモノや情報を入手できるようになったことで商品・サービスの差別化が難しくなりました。
現代の消費者の傾向を知ることでUXの重要性をより理解することができます。
そこで、ユーザーのモノに対する3つの価値観をご紹介したいと思います。
ユーザーのモノに対する3つの価値観
・モノを増やしたくない
・欲しい物がパッと思い浮かばない
・モノに対する価値観
「商品・サービスを購入する行動をとるときどんな考えをしているか?」
想像しながら読んでいただくと、よりUXの重要性への理解が深まると思います。
UXが重要視されるのは「差別化が難しくなったから」
UXが重要視される理由は、差別化が難しくなったからです。
商品・サービスを購入するとき、大きな質の違いがなくなってきたのです。
例えば、普段利用しているコンビニの100円コーヒー。
明確に不満があったり、「もっとこうしてほしい」という要望がすぐに思いつきますか?
特別なこだわりがない限り「不満や要望はあまりない」という人が大半なのではないでしょうか?
店舗での購入だけではありません。
家にいながら、欲しい服を探したり、趣味についてのちょっとした情報やニュースをチェックしたくなることがあると思います。
そんなとき、多くの人がスマホを開いて、目的の情報を見つけるでしょう。
現代は、誰でも簡単にモノも情報も簡単に入手できる時代なのです。
モノも情報も簡単に手に入るからこそ、多すぎて何を選べばいいのかわからないというケースも多くなっています。
モノに対する価値観
モノに溢れる時代になり、人々の価値観にも変化が起きていることがわかる調査結果を、ここでいくつかご紹介します。
1)モノを増やしたくない
ジェイアール東日本企画(jeki)が発表した「普段の生活に関するアンケート調査」では18〜54歳の約半数の人が、「家にモノが溢れ、これ以上モノを増やしたくない」と回答しています。
「当てはまる」と回答した方が14%、「やや当てはまる」と回答した方が38%、合計52%の方が「家にモノが溢れ、これ以上モノを増やしたくない」と回答しています。
(引用元:jeki「普段の生活に関するアンケート調査」より|18〜34歳 900サンプル/35〜54歳 200サンプル)
https://www.jeki.co.jp/info/files/upload/20160125/160125WoTHP.pdf
2)欲しい物がパッと思い浮かばない
ジェイアール東日本企画(jeki)が発表した「普段の生活に関するアンケート調査」でも18〜54歳の約半数の人が「いま欲しいモノがパッと思い浮かばない」と回答しています。
「当てはまる」と回答した方が16%、「やや当てはまる」と回答下方が34%、合計50%の方が「家にモノが溢れ、これ以上モノを増やしたくない」と回答しています。
(引用元:jeki「普段の生活に関するアンケート調査」より|18〜34歳 900サンプル/35〜54歳 200サンプル)
https://www.jeki.co.jp/info/files/upload/20160125/160125WoTHP.pdf
3)モノに対する価値観
調査会社の株式会社テスティーが公開している「シェアリングエコノミーに関する調査」では、どんなものに価値を感じるかを聞いたアンケートがあります。
モノに対する価値観を質問したところ、20代男性の64%、20代女性の79%が「一般的なブランド価値よりも、自分に合ったものが欲しい」と回答しました。
8割近くの20代女性が、ブランドより、自分に合ったものが欲しいと回答していることより、顕著な結果であると言えます。
(引用元:株式会社テスティー「シェアリングエコノミーに関する調査」より|20代男女1,096サンプル)
https://ecnomikata.com/column/21887/
モノに対する価値観からみるUXの対策
現代に選ばれる商品は、自分が好きで、自分に似合うもの。
サービスでいうと、自分にとってよい体験ができること。
従来の高機能・高品質で普遍的な価値を持つ商品よりも、よりよい体験をもたらしてくれる商品・サービスが選ばれる時代になりました。
つまり、通い慣れた馴染みの店やイメージのよいお気に入りのメーカー、店舗の販売員やブランドの営業担当の方との相性など、主観的な感覚がより重視される傾向が強くなっているということです。
さて、読者の方は、商品・サービスを購入する時どう行動していたでしょうか?
普段、何気なく体験していることや考えていることに目を向けてみると「あ、これもUXだったんだ」と気づくことがあるかもしれませんね。
モノと情報にあふれ、商品・サービスの質が消費者の求める一定の水準を超える時代だからこそ、「体験」の価値が上がっており、UX戦略で対策をする必要があるのです。
5. UXの事例をご紹介します
よいUX、よいユーザー体験を提供することで支持を得ているサービスをご紹介します。
今回は3つのサービスからUXについて分析をしてみます。
・スターバックス
・BEAMS(ビームス)
・Amazon Echo
では、UXの事例を見ていきましょう。
UXに基づいたサービス
1)スターバックス
スターバックス コーヒー ジャパン(以下、スターバックス)のUXはなんでしょうか?
スターバックスは、ただコーヒーを売っている店ではありません。
スターバックスの店舗そのものが、家・職場に続く「サードプレイス」というコンセプトで、リッチで心地よいカフェ空間体験を提供しています。
創業者は「サードプレイス」というコンセプトを打ち出し、体験を売るということを体現しています。
・店の内装や雰囲気
・Wi-Fi環境
・店員のホスピタリティ
・ドリンクのカスタマイズ性
全ての店舗でこういった環境が整えられているのは、まさにスターバックスの目指す体験を実現するためのUX戦略と言えるでしょう。
2)BEAMS
BEAMSのECサイトの事例をご紹介します。
セレクトショップでありオリジナルのアパレルから雑貨を扱うBEAMSは、オンラインサイトで商品を売るだけでなく、サイト上でスタッフの個性や視点を活かした発信をしています。
ECサイトからFacebook、Twitter、Instagram、YouTube、LINEと各公式SNSでコンテンツの配信。BEAMSが展開するブランドごとにスタッフが動画でコーディネートを紹介したり、特集やライブ配信などのコンテンツが作られています。
BEAMSのECサイト以外では体験できない、購入後の自分をイメージできる体験が設計されているのです。
ECサイトを訪れる理由をうまく作っている例ですので、ぜひのぞいてみてください。
3)Amazon Echo
Amazon Echoは音声アシスタント「アレクサ」が搭載されています。
「アレクサ」と呼びかけることで、音声動作が可能になります。
Amazon Echoの開発チームは、ユーザーがスマートスピーカーに何を求めているかを追求しました。
機能だけを考えれば「音楽をかけて」という声に反応して指定した曲をかけられれば、スマートスピーカーとしての機能的な役割は果たせることになります。
Amazon Echoの開発チームは人間らしいやりとりやりとりが発生することで、ユーザーの満足が高まるのではないか、という仮説を立てたのです。
それを検証するために実施したのが、システムをアナログで人が動かしてテストする「オズの魔法使い」という実験です。
Amazon Echoの実験では、人間が別室に控えて「Amazon Echoの声のを発する役」を担当し、被験者の発言に対して反応する、というもので、より普段の会話に近い方がユーザーの満足度が上がることを検証しました。
結果、スマートスピーカーの中でもとりわけ「自然な会話ができる」というのがAmazon Echoのの特徴となったという話があります。
6. 【明日からできる!】UX戦略のはじめ方と進め方
UX戦略とはユーザーニーズを満たしながら、それをビジネス課題の解決につなげるための戦略設計です。
UXの理念として冒頭でもお伝えした「商品・サービスを通してユーザーにとって価値ある体験を提供する」ことについて掘り下げていきます。
ここでキーワードになるのが「お客様(ユーザー)・価値・提供するもの」の3つです。
UX戦略の立案において大切なのは、「お客様とは?」から始めて、お客様が求めることに基づいて提供するものについて考えることです。
お客様に喜ばれる体験を提供することがよいUX戦略の近道になります。
UX戦略のはじめ方
1)ユーザーについて知ろう
UX戦略で1番はじめに取り組むことは、ユーザーについて知ることです。
UX戦略においては、実際に来店したお客様やリピーター購入者だけでなく、これから利用するお客様や、今後購入者になりうる全ての人を「ユーザー」として考えます。
ユーザーについてまとめた表をご覧ください。
UX戦略におけるユーザーは5つに分類することができます。
リピーター、利用・購入者、顕在顧客、準顕在顧客、潜在顧客です。
・リピーターとは、自社や自社商品のことを知っていて、購入を継続しているユーザーです。
・利用・購入者とは、自社や自社商品のことを知っていて、利用・購入しているユーザーです。
・顕在顧客とは、自社や自社商品のことを知っていて、利用を検討しているユーザーです。
・準顕在顧客とは、自社で扱う商品へのニーズはあるものの、利用の選択肢に入れないユーザーです。
・潜在顧客とは、そもそも自社を知らなかったり、自社が提供するようなサービスの利用が念頭にないユーザーです。
UX戦略では、潜在顧客のようにこの先利用者・購入者になりうる全ての人が「ユーザー」にあたる、ということが特徴です。
大きな視点でユーザーをみることで、利用者層を広げたり新たなファンを獲得することが可能になります。
2)ユーザーにとっての価値を知ろう
UX戦略で2番めに取り組むことは、ユーザーにとっての価値について知ることです。
価値は、「ニーズ」と言い換えることができます。
UX戦略におけるニーズは3つにわけられます。
顕在ニーズと潜在ニーズ、ユーザーインサイトです。
・顕在ニーズとは、ユーザー自身が欲しているモノを自覚し、それを満たすための行動を起こしているニーズ。
・潜在ニーズとは、表面化していないが無意識下に存在し、顕在ニーズの動機となっているニーズ。
・ユーザーインサイトとは、潜在意識にすら上がっていないが、提案することで利用動機となる新しいニーズ。
よく氷山の図を用いて例えられるので、ご存じの読者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
水面上に見えている顕在ニーズの面積がわずかであることに驚きますよね。
顕在化しているニーズの水面下に、何倍もの大きさのニーズが隠れていることが表現されています。
潜在ニーズは顕在ニーズの直接的な動機となっているニーズなので、表面化はしていないものの、ユーザー自身から話を聞くことで見えてくることが多くあります。
一番下に存在するユーザーインサイトは、ユーザー自身も認知していないニーズであり、提案を受けて初めて利用動機が生まれる新しいニーズであると考えられています。
3)ユーザーへの提供方法を考えよう
UX戦略で3番目に取り組むことは、何を、どう提供するかを考えることです。
UXは商品・サービスを通じて、ユーザーにとって価値ある体験を提供することです。
ターゲットを分析し、ターゲットが求める価値を検証し企画立案にはいります。
企画立案から取りかかってしまうと、ユーザーに響かない、的外れな企画を立ててしまう原因になります。
よいUXのためにはユーザーを知ること、ユーザーのニーズを知ることをリサーチ・分析したうえで、初めて提供するものについて企画立案するのが成功の鍵です。
「お客様(ユーザー)・価値・提供するもの」の3つの流れを作ることが、良質なユーザー体験を提供するポイントになります。
UX戦略の進め方
UX戦略を立てるにあたっては、「何を提供するか?」ではなく「ユーザーとは?」から考えていく必要があるとわかっていただけたでしょうか。
続いては、UX戦略の流れについて、より具体的に踏み込んでご紹介します。
UX戦略は大きく分けてこの4段階のフローで進めていきます。
1)リサーチ・ヒアリング
市場全体やユーザー、競合などを調査して、客観的で正確な情報を収集します。
2)ユーザーの要求発見
リサーチから得られた結果をもとに仮説を立てて検証し、ユーザーの隠れたニーズや課題をあぶり出します。
3)アイデアの発想
ユーザーの見えてきたニーズを満たす、あるいは課題を解決するアイデアを出して、その手法を具体化していきます。
4)実行
立てた戦略をもとに、Webサイトやアプリの制作、商品開発や店舗設計など、アイデアを形にするために必要な施策を実行していきます。
UX戦略において大切なのは、4つのフローを一巡しただけで終わるのではなく、必要に応じて各段階を行ったり来たりしながら繰り返していくことです。
一度で最適な戦略を打つと考えるのではなく、仮説・検証を繰り返しながら、少しずつ精度を磨いていきます。
7. 【明日からできる!】UXの意味と重要視される理由を知ってUXを実践
この記事では、UXの意味とUXが重要視される理由について事例を交えてご紹介しました。
UXとはユーザーエクスペリエンス(User Experience)の略で、日本語ではユーザー体験を意味します。
UXが重要視される理由は、ユーザーにとってよいUXを設計することが他社との差別化につながるためです。
最後に、UX戦略設計で忘れてはいけないことをお話します。
ユーザーにとっての価値を提供するのがUXですが、ビジネスである以上、企業にとっての利益にもつなげていく必要があります。
ユーザーに価値を提供して、そこで得た利益でさらに大きな価値を提供できるようになる事業を設計していくことが、よいUX戦略でしょう。
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